「五大記」第三十四話を公開しました

五大記」の第三十四話を公開しました。タイトルは「数学者」です。

キリスト教には、最後の審判の日にキリストが再臨するという教義があります。同様に、イスラーム十二イマーム派にも、世界の終末の直前に第十二代イマームがマフディー(救世主)として再臨するという教義があります。キリスト教徒たちや十二イマーム派の信者たちが、その日が来ることを心待ちにしているであろうということは想像に難くありません。

私はキリスト教徒でも十二イマーム派の信者でもありませんが、私もまた、キリストやマフディーの再臨を心待ちにしている一人です。ただし、私が彼らの再臨を心待ちにしている理由は、キリスト教徒たちがキリストの再臨を心待ちにしている理由とも、十二イマーム派の信者たちがマフディーの再臨を心待ちにしている理由とも、同じではありません。私の理由は、再臨したキリストやマフディーと、彼らの行動を阻止しなければならないと考える人々との間に展開するであろう抗争を見たいと思うからです。

もしもキリストやマフディーが再臨して様々な奇跡を人々に見せたとするならば、世界が終末を迎えることを望まない人々は、キリストやマフディーの行動を阻止することに全力を傾けるに違いありません。おそらく、キリストやマフディーとその抵抗勢力との間には、激しい闘いが繰り広げられることになるでしょう。「ハルマゲドン」と呼ばれるそのような抗争を、同時代の人間として観戦したいと望むのは、それほど特殊な願望ではないと思います。

「ハルマゲドンをこの目で見たい」という願望は、「黙示録」を嚆矢として様々な物語を生み出してきました。「五大記」第三十四話も、その系譜に連なる物語の一つです。この物語に登場する神は、地上に降臨して人々に奇跡を見せ、二千年後の再臨を予告して姿を消します。予告のとおりに二千年後に再臨した神は、人類を滅亡させたのちにすべての死者を復活させて彼らを裁きにかけようとするのですが、人類の滅亡を望まない人々は、人類を存続させる道を模索し続けます。果たして、神の望みどおりに人類は滅亡するのか、それとも滅亡を望まない人々の抵抗によって滅亡は回避されるのか。物語の行方は、ぜひ、本編を読んで確かめていただきたいと思います。