「五大記」第三十七話を公開しました

五大記」の第三十七話を公開しました。タイトルは「斬首」です。

歴史というのは物語の一種であると考えることができます。しかしそれは、人間による創作的な意図とは無関係に成立する物語です。したがって、歴史書を物語として読んだとしても、必ずしもそれによってカタルシスを得ることができるとは限りません。

歴史には、栄華を誇る人々のみならず、彼らに虐げられる人々もまた登場します。創作的な意図のもとに成立した物語の中に虐げられた人々が登場するとすれば、その多くの場合、彼らは自分たちを虐げた人々を打倒し、それによって読者にカタルシスを与えることになるわけですが、歴史書がそのようなカタルシスを読者に与えるとは限りません。虐げられた人々が、虐げられたまま歴史の舞台から去っていくという展開になることが少なくありません。

ヨーロッパにおける魔女の歴史も、カタルシスとは無縁の物語です。彼女たちは、栄華を誇るキリスト教徒たちから激しい弾圧を受けました。しかし、彼女たちによるキリスト教徒たちの打倒というものは、史実には存在しません。

「五大記」第三十七話にも、魔女と呼ばれる女性たちが登場します。彼女たちは、魔法と呼ばれる超自然的な技術を駆使することによって人々の様々な問題を解決することを生業としています。ところが、新たに台頭したスナクム教という宗教を信じる人々は、彼女たちを徹底的に弾圧します。

第三十七話の魔女たちも、キリスト教徒に弾圧された歴史上の魔女たちと同じように、弾圧されたまま物語の舞台から退場することになるのでしょうか。それとも、自分たちを弾圧した者たちを打倒するのでしょうか。その後の展開につきましては、ぜひ、本編を読んで確かめていただきたいと思います。