芸術作品に値段を付与するという行為の意味
「元増田です」に対するブクマコメントを読ませていただきました。
私は、音楽に限らず、優れた芸術作品に接したとき、それを制作した芸術家に対して賞讃や感謝の気持ちを持つというのは自然なことだと思います。そして、作品に対して対価を支払うことがそのような気持ちを表明するための手段となり得るということも否定しません。
しかし、そのような問題と、芸術家自身が持つ目的意識とは別の問題です。私は、芸術家が自分の作品に貨幣経済的な意味での値段を付与するという行為は、自分の芸術の目的はビジネスであるという目的意識の表明にほかならないと考えています*1。ですから、芸術そのものを目的として作品を制作している芸術家は、自分の作品に値段を付与するべきではないと思います*2。
値段が付与されていない芸術作品を制作した芸術家に対しては、「対価を支払う」という手段とは異なる手段で、賞讃や感謝の気持ちが表明されるべきでしょう。それに適した手段というのは現状ではまだ整備されるに至っていませんが、これは、これから本格的なCGMの時代を迎えるに当って解決しておかなければならない課題の一つです。id:minorito0411さんが、「えーと。音楽にお金を払わなきゃいけないっておかしくない?」に対するブクマコメントの中で「娯楽用通貨」というものを提案していましたが、貨幣経済とは異なる価値体系のもとでの通貨*3を万人が発行できるようにするというのは、一考に値する提案ではないかと思われます。