「五大記」第四十話を公開しました

五大記」の第四十話を公開しました。タイトルは「軸」です。

「五大記」第四十話の元ネタは二つあります。一つはラリイ・ニーヴンが書いた『リングワールドふたたび』(The Ringworld Engineers)というSFです。これは、「リングワールド」と呼ばれる建造物に訪れんとする破滅的な危機を回避するために、その建造物のどこかにある「補修センター」を捜し出すという物語です。

もう一つの元ネタは、ハインリッヒ・シュリーマンの自叙伝です。彼は、ホメーロスが書いた『イーリアス』(Ilias)という長編叙事詩に登場する「トロイア」と呼ばれる都市国家は実在すると考え、私財を投じて発掘調査を実施し、その遺跡を発見したと自叙伝に記しています。

「五大記」第四十話は、『リングワールドふたたび』と同様に、破滅的な危機を回避する物語です。この物語で破滅の危機に瀕するのは、登場人物たちが暮らしている宇宙の全体です。この物語に登場するスミナリマという人物は、その危機から宇宙を救うために行動を起こします。そのための手掛かりとなったのは、シュリーマンの場合と同様に、古代の文献です。スミナリマは、『始原記』という古代の文献が言及している「トクタピ」と呼ばれる施設は実在すると考え、それを探し出すことによって宇宙を危機から救おうとするのです。

「五大記」第四十話には、「五大記」に含まれる他の物語の多くと同様に、「神」と呼ばれる存在者が登場します。この物語に登場する神々は、宇宙を創造した存在者です。しかし、超自然的な能力は持たず、あくまで物理の法則の支配下にあります。のみならず、この物語にはいかなる超自然的な現象も登場しません。したがって、この物語は神話でもファンタジーでもなく、おそらく、SFに分類することが可能な物語だと言っていいでしょう。