「五大記」第四十三話を公開しました

五大記」の第四十三話を公開しました。タイトルは「受刑者」です。

多くの宗教は、人間の霊魂は肉体の死後も存在し続けると主張しています。ただし、人間の霊魂は死後にどこへ行くかという点についての主張は、宗教ごとにさまざまです。輪廻してふたたび生物としてこの世界に生まれてくると主張する宗教もあれば、「天国」や「極楽」などと呼ばれる、この世界とは別の世界で暮らすことになると主張する宗教もあります。

人間が死後に暮らすことになる世界が存在すると主張する宗教は、それがどのような世界であるかということを経典などで説明してくれています。しかし、それらの経典のいずれも、死後の世界についての説明は微に入り細を穿つものではありませんので、それを読む者は、しばしば経典の作者に質問したい衝動に駆られることになります。

おそらく、既存の宗教の経典のうちで、「死後の世界でも自然科学の研究は可能であるか」ということに言及しているものは、皆無と言っていいのではないでしょうか(例外をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示ください)。死後の世界は、現世とはまったく異なる自然科学的な法則に支配されていると思われます。多くの人々にとって、特に理科系の人間にとって、死後の世界がどのような法則に支配されているのかを知りたいという欲求を抑圧することは困難でしょう。もしも自然科学の研究が禁止されていたとすると、多くの人々が、大いなる欲求不満を感じながら生活することを余儀なくされるに違いありません。

「五大記」第四十三話の舞台は、自然科学の研究が法律で禁止されている死後の世界です。法律を犯して自然科学の研究をした者は、「地獄」と呼ばれる監獄に収監されることになります。しかしあるとき、自然科学の研究を禁止する法律は、法律の制定に携わっている「議員」と呼ばれる天使たちによって撤廃されます。それ以降、人間たちは死後の世界についての自然科学的な研究を進め、多くの謎を解明していきます。ところが、自然科学の発達は、世界に破滅をもたらすことになります。それがどのような破滅なのかということにつきましては、ぜひ、本編を読んで確かめていただきたいと思います。