「五大記」第四十四話を公開しました

五大記」の第四十四話を公開しました。タイトルは「分岐」です。

多神教において想定されている神々の社会体制というのは、多くの場合、個々の神が自身の得意分野を持っていて、それを生かした分業体制になっているように思われます。すべての神々が同等の発言権を持っていて、あらゆる事案を合議に基づいて解決する、という体制が想定されている多神教というのは、あまり聞いたことがありません。しかし、無数に存在する可能世界のうちには、二柱以上の神々が存在していて、それらの神が合議によって様々な事案を解決しているという世界も、無数に存在するはずです。そして、それらの世界のうちには、多数決を原則とする世界もあれば、満場一致を原則としている世界も存在するでしょう。「五大記」第四十四話は、七柱の神々が、満場一致を原則とする合議制によってすべての事案を解決している世界を舞台とする物語です。

複数の神が全員一致を原則として事案を解決している世界においては、もしも全員の意見が一致しなかった場合はどうするのか、ということが問題となります。第四十四話の世界におけるその場合の解決策は、宇宙の分岐です。すなわち、宇宙を分岐させて、それぞれの宇宙に対してそれぞれの意見を反映させるわけです。ただし、複数の宇宙が並立している状態は、永遠に続くわけではありません。神々は、どの意見がベストだったかということが判明した段階で、その意見が反映された宇宙だけを残して、それ以外の宇宙を消滅させるのです。

第四十四話の世界に存在する七柱の神に、もしも私心というものがまったくないと仮定するならば、それらの神々の間に軋轢が生じることはないでしょう。しかし、軋轢のない世界には、面白味に欠ける物語しか発生しません。ですので、この物語の世界は、七柱の神のそれぞれが、自身の意見が反映された宇宙が消滅させられることを避けたいと望む私心を持っている、という設定になっています。

神々は、自身の意見が反映された宇宙を消滅から救うために、いったいどのような行動に出るのでしょうか。この点につきましては、ぜひ、本編を読んで確かめていただきたいと思います。