「五大記」第四十七話を公開しました

五大記」の第四十七話を公開しました。タイトルは「台座」です。

私は、「アイランド」(監督:マイケル・ベイ、2005年)という映画が好きで、DVDで何度も観ているのですが、私がこの映画を好む理由は、「虐げられている人々が解放される物語」というのが私の琴線に触れるからではないかと思っています。「エリジウム」(監督:ニール・ブロムカンプ、2013年)も、私が気に入っている映画の一つですが、その理由もおそらく同じです。

ところで、「虐げられている人々が解放される物語」のうちで人類に最も親しまれているものは、「出エジプト記」ではないでしょうか。この物語が多くの人々から親しまれているということは、ハリウッドによって何度も映画化されているという事実*1からも明らかです。しかし、この物語に関しては、私はそれほど好きではありません。その理由はおそらく、この物語の中では偶像崇拝という信仰形態が好ましくないものとして扱われているからではないかと思われます。

出エジプト記」は、エジプト人たちに奴隷にされて虐げられているイスラエルの民が解放される物語です。虐げる側のエジプト人たちは、偶像を崇拝する人々です*2。それに対して、虐げられる側のイスラエルの民は、指導者となったモーセから偶像崇拝を厳しく戒められます。私に限らず、偶像崇拝が大好きな人々にとって、「出エジプト記」というのは、心の底から楽しむことができない物語なのではないでしょうか。

「五大記」第四十七話は、偶像崇拝を肯定する人々と否定する人々を入れ替えた、「出エジプト記」の改訂版です。「出エジプト記」を読んで(あるいはそれを原作とする映画を観て)残念な気分にさせられた、偶像崇拝が大好きな人々に、お口直しとしてお薦めしたいと思います。

*1:十誡」(監督:セシル・B・デミル、1923年)、「十戒」(監督:セシル・B・デミル、1956年)、「プリンス・オブ・エジプト」(監督:ブレンダ・チャップマン他、1998年)、「エクソダス:神と王」(監督:リドリー・スコット、2014年)。

*2:エジプト人の信仰について、「出エジプト記」には言及がありませんが、古代のエジプト人が神像を崇拝していたということは史実ですし、彼らが制作した神像は現在も各地の博物館などで保存されています。また、セシル・B・デミル監督の1956年の「十戒」には、YHWHに殺された長男の復活をラメセスが神像に祈願するシーンがあります。