「靖国神社の基礎知識・第零版alpha00」を公開しました

メディアが伝えるところによると、大阪府教育委員会は、入学式や卒業式で教職員が国歌を起立斉唱しているかどうかを管理職が目視で確認するように求める通知を府立学校に出していたそうです*1大阪府府民としては、大阪府でこのような通知が出されたというのはきわめて恥ずかしいことですが、府立学校の入学生や卒業生に対する教育という観点から見れば、これは大いに有意義な通知だと言うことができます。君が代の口元監視の通知が教育的に有意義だと言うと、進歩的な人々から非難を浴びそうですが、私が期待しているのは、それによって君が代に対する尊崇の念が高まることではなく、それとはまったく逆のことです。

府立学校の生徒たちは、おそらく、君が代をめぐる大人たちの確執を冷静な目で見ているはずです。彼らの中には、「教育委員会の偉い人がわざわざ教職員に通知を出すほど、君が代というのは大切なものなんだ」と考える単純な生徒も存在するでしょうが、彼らの大多数は、「教育委員会がこのような通知を出さなければならないほど君が代が嫌われているのはなぜだろう」という疑問を抱くはずです。そして、その疑問を解決するために、君が代が背負っている日本の近現代史について勉強してみよう、と思う生徒たちも少なからず存在するはずです。

君が代に限らず、近代天皇制を想起させる各種のシンボルは、復古主義者たちの期待とは裏腹に、近現代史への関心を呼び覚ます教材という機能を持っています。靖国神社というシンボルも、その点については同様です。なぜ、憲法で定められた政教分離の原則を踏みにじってまで政治家が靖国神社に参拝するという現在の状況が生まれたのか、という疑問を抱いた人々は、その謎に対する解答を求めて近現代史の薮の中に足を踏み入れることになるでしょう。

昨年の秋に私は、「靖国神社の基礎知識」という文章を書き始めました。これは、靖国神社という教材によって近現代史への関心を呼び覚まされた人々を読者として想定して、その神社に関する基本的な事項について説明するチュートリアルです。本日、ようやくその第1章が完成しましたので、アルファテストを目的として公開することにしました。「無料チュートリアル:思想」というサイトにLaTeXのソースとPDFを置いています。現在はまだ第1章「予備知識」のみですが、今後、次のような章を追加していく予定です。

  • 第2章「概要」
  • 第3章「歴史」
  • 第4章「英霊」
  • 第5章「戦争責任」
  • 第6章「訴訟」
  • 第7章「護国神社と忠魂碑」

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